「今、世界を見渡せば、とても直視できない悲惨な出来事があちこちで起きています。とんでもない不条理、不合理、不公平に嘆き、苦しむことばかりです。なのに私たちは場に足を運び“悲劇”を観る。なぜか。そこにカタルシスがあるからです。そして、そのカタルシスを呼ぶ重要な要件の一つが“美しさ”です。三浦涼介さんのオイディプスは、窮するほどに美しいのです」
まもなく2023年以来の再演の幕が上がろうとしている舞台『オイディプス王』。前回に続き演出を手がける石丸さち子さんは、同じく前回に続いて主演をつとめる俳優・三浦涼介さんの魅力と厚い信頼を力強い口調で語った。
この記事の画像(3枚)
「再び彼とこの舞台ができることがとても嬉しいです。きっと私たちは、初演以上に素晴らしいものを皆さんにお見せできると確信しています」
2人の出会いは、21年に上演したミュージカル『マタ・ハリ』。石丸さんは、自身に与えられた役に慎重に“出会っていく”三浦さんの姿に深く感銘を受けたのだという。
「役を演じる最初の過程は、その役と“出会う”ことです。三浦さんは、その作業がすごく繊細で。自分の現在というものを活かしながら、時に畏れを抱きつつも懸命に、そして丁寧に相手を理解しようとしていました。その方向性が演出家のリードと合致したとき、驚くべき破壊力を発揮する――。そんな姿を知っていたので、彼が、このオイディプスという過酷な役に出会ったらどうなるんだろう? と、強く興味を惹かれました」