天皇両陛下の長女、愛子さまが本日、横浜で行われた新しい海洋調査船の進水式に出席されました。愛子さまが船の進水式に臨まれるのは今回が初めてであり、多くの注目を集めました。
式典は、横浜にあるジャムステック(海洋研究開発機構)で開催され、新たに建造された北極域研究船「未来2」の進水を祝うものでした。愛子さまは、特別に用意された斧でロープを切り、船が水面に浮かび上がる瞬間を見守りました。船が進水すると、祝福の花火が打ち上がり、会場は拍手と歓声に包まれました。
愛子さまの公務出席は、昨年10月の国民スポーツ大会以来となり、独り立ちした姿を見せることができました。未来2は、北極域における様々な課題の解決を目指し、国際的な研究活動を展開するための船です。最新の観測機能を備え、世界レベルの研究が期待されています。
皇室からはこれまでにも、1998年と2002年に愛子さまのおばである黒田清子さんが、また、2015年には秋篠宮佳子さまが海洋調査船の進水式に出席されています。愛子さまの出席は、皇室における新たな伝統の始まりを示唆しており、今後の活躍が期待されます。
天皇、皇后両陛下の長女愛子さま=佐賀市で2024年10月12日午前10時17分、金澤稔撮影
天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが19日、横浜市の造船所で北極域研究船「みらいⅡ」(全長128メートル)の進水式に臨まれる。皇室は進水式や完成式に招かれる機会が多く、愛子さまは今回が初めて。歴史を写真で振り返る。
両陛下は「みらい」の完成式に
愛子さまが生まれる前の1997年10月、両陛下(当時は皇太子ご夫妻)は東京・晴海ふ頭で海洋地球研究船「みらい」と深海調査研究船「かいれい」の完成式に出席した。
「地球温暖化などの地球規模の環境問題が人類共通の課題となっており、海洋の諸現象の解明は不可欠です。(船が)十分活用され、重要な役割を果たしていくことを期待します」
式典で天皇陛下はこう述べた。
以降、海洋科学技術センター(現・海洋研究開発機構)の「みらい」は環境調査の最前線で活躍している。2025年度中の運用停止を予定しており、「みらいⅡ」の建造が進められてきた。
環境保全の役割は「みらいⅡ」へ
19日に愛子さまが進水式に臨む「みらいⅡ」は厚さ約1・2メートルの氷を砕きながら進む能力を備える。「みらい」では不可能だったエリアへの到達も期待されている。レーダーやドローン、無人潜水機など世界レベルの観測機能を備え、急激な気候変動が進む北極域の大気や海洋を多角的に観測するという。
30年近く前、両陛下が環境保全への思いを込めながら完成を祝った「みらい」の役割は「みらいⅡ」に受け継がれる。より一層、地球環境の課題解決への貢献を目指す。
船との関わり時代とともに
歴史をさかのぼると、「みらい」はもともと「むつ」という船名の日本初の原子力船だった。69年6月、東京・豊洲で開かれた「むつ」の進水式には上皇ご夫妻(当時は皇太子ご夫妻)が出席している。
「むつ」は95年6月に原子炉が撤去された。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)から海洋科学技術センターに船体が引き渡されて改造が進み、「みらい」に生まれ変わった。
「みらい」「みらいⅡ」のような調査船の他、皇室は練習船の進水式にも度々、臨んでいる。明治以降、太平洋戦争が終わるまでの進水式や命名式で皇室と関わる船は、軍艦が多かった。皇室と船との関わりも時代とともに変化してきている。【山田奈緒】