カリスマディレクターがあっけなく消えていった。
テレビ朝日は3月19日、コンテンツ編成局第2制作部エグゼクティブディレクター(50)がスタッフへのパワハラと会社経費の不適切な使用があったとして降格処分にしたと発表した。
この男性は『ナスD大冒険TV』を担当し、出演もしている“ナスD”こと友寄隆英氏だという。この番組の放送打ち切りも決定し関連サイトやSNSも跡形なく“抹消”された。
ナスDというのはテレビマンにとってどういった存在なのだろうか。
「いち社員が冠番組を持ちレギュラーが続くというのは非常にレアケース。メインにタレントを据えなくていいということもあり制作費が浮きますし、ナスDの貢献度は半端じゃない。そもそも50歳の社員がディレクターをまだやっているということ自体が非常にレア。普通はチーフプロデューサーや部長になっている年次です。
監督や演出家を兼ねて主演までやっているような型破りな存在で、当時人気だったタレントと結婚しています。一方、こういったカリスマは社内で“裸の王様”になってしまうケースが多い。人目につきにくい外部の編集室でパワハラしていたというのは悪質ですよ」(テレビ局ディレクター)
さらに’19年から今年1月にかけて、個人的な会食などの費用を会社に請求するなど、総額約517万円を不正に使用していたという。
これらがテレ朝から発表されるとSNSなどでは
《降格処分だけって身内に甘すぎる》
《他局が同じ騒動を起こせば間違いなくクビだ》
などとテレ朝の対応に批判の声が上がっている。
◆退職後は大手芸能事務所に
今年1月には朝日放送が、交際費約116万円を不適切に受給したとして、同局の取締役の辞任を実名で発表している。
また’23年には、日本テレビ系列の読売テレビの40歳代男性管理職が番組制作費などとして計1383万円を不正に受け取っていたと発表し懲戒解雇。本人に返済の意思があるため、刑事告訴はしないとした。
男性は自ら飲食した際の領収書を自分の音楽番組で雇っている外部の番組制作会社に渡し、「追加演出費」の名目で読売テレビサイドに水増し請求させ、キックバックとして計877万円を現金で受け取っていた。その他にも使途不明の「プール金」など計506万円を不正請求していたという。
読売テレビの番組関係者が明かす。
「この男性も優秀なテレビマンでした。ある時を境に社内で経費の使用が非常に厳しくなり飲食などでかなりの少額しか使えなくなった。このPは注目のアーティストを自分の番組にブッキングするために大手芸能事務所の幹部などを接待していたといわれています。番組のクオリティを上げるために苦肉の策で裏金をねん出していた。芸能界というのはある程度の“コネ”がなければうまくいかないという側面もあるので少し同情の声もありました。これまでの関係値もあり、退職後は大手芸能事務所に拾ってもらい仕事をしていると聞きました」
不適切使用の金額は読売テレビ元社員のほうが大きいが、ナスDに関しては“パワハラ”も加わっている。降格処分のみで社内に残すというのは、“甘い”という指摘があっても仕方ないだろう。
持ち前の技量を活かせばまた“不死鳥”のように表舞台に舞い戻ってくる可能性もなくはない。それだけに、不祥事がきっかけで名物番組が終わったことは残念でならない。